このまま向こう半年は白・ロゼ・泡しか飲まないかも、と思うほど突然暑くなったシドニーですが、冬に逆戻りした数日間にやっぱり赤ワインを欲しました。
私たちのお財布事情を察し、一番下の棚から店員さんが丁寧におすすめしてくれたワイン。
少し調べてみたら、オーストラリアでは既に超希少ワインになっているかもしれないことが分かりました。
Wickhams Road Gippsland Pinot Noir 2018
産地 | ヴィクトリア州 ヤラヴァレー ギップスランド |
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品種 | ピノ・ノワール |
生産年 | 2018 |
タイプ | 軽やかで繊細 |
価格 | 26AUD |
「わっ!!めちゃくちゃうまい!!」
身も蓋もない言い方ですが、食卓で私たちはこのようなことを口走っていました。
開けたてにはブルーベリーのガムみたいなツンと強い香りがしたのですが、グラスを回して口に含むとやわらかさとエレガントさに驚きました。
酸が豊かだけどトゲトゲしてなくてチャーミング、苺のようなかわいらしい果実味がほんわりとながーく続きます。
若いピノ・ノワールに時々感じる固さやひっかかりのようなものが皆無で、スムースでバランスが良くて心地よすぎる。
やっぱり26ドル出すと違うよね、とかなんとか言いながら一滴残らず飲み干したあとに、ワイナリーのホームページへ訪問。
なんとこのワインの定価が18.99ドルであることを知ってしまいました。
なんで7ドルも高く買ってしまったのか、ワインショップで値段を間違えられたのか、何よりこれが19ドルってお得すぎる、といろいろ衝撃。
「Wickhams」の読み方もよく分からないまま「ウィックハムズ」などとカタカナでも検索をかけたら、日本語のページが出てきました。
「ウィッカムズ ロード ギップスランド ピノ・ノワール」は有名なハイコスパワインだったのです。
「キツネのラベルでお馴染み」だそうですが知らなかった…。
私はこうしてワイン日記を書いていますが、飲む前には一切ワインのことを調べず、薦められるがままか直感で選びます。
ジャンシス ロビンソンが選んだロックダウン用赤ワインだった
あるオンラインショップには「このワイナリーのオーナーはかなりのお金持ちで、採算度外視で丁寧に造っているのでバカみたいに安い」と書かれていました。
また、東京・恵比寿の有名ワインショップでは「豪州で最もコスパに優れた、エレガントなピノの極み」という文句と共に「2020年ロックダウン用赤ワインとしてジャンシス ロビンソン女史が選んだのがこのワイン」という一文を発見。
早速、元記事を探してみました。
※ジャンシス ロビンソンは、「ワインの女王」と称される御年70歳のイギリス人ワイン評論家です⇒ジャンシス・ロビンソン - Wikipedia
ジャンシス ロビンソン氏は、2020年5月9日の記事冒頭で、
- 少し前までは、イギリス人にとって1本7ポンド(約950円)で面白いワインを見つけるのは比較的簡単だったが、関税の引き上げとポンドの価値の低下でその基準値が10ポンド(約1350円)にまで上昇してしまった
- アメリカのワイン愛飲者はコスト意識が低く、10ポンドに相当する12ドルで美味しいワインが買えることは本当に珍しく、一部の地域では100ドル(約10,500円)以下のワインはむしろお買い得とみなされている
ということに触れながら、昨今ワイン価格のスイートスポットになると考える10~20ポンドで、ロックダウンに飲みたい赤ワインを挙げています。
(※1ポンド135円、1ドル105円で表記)
ウィッカムズ ロード ギップスランド ピノ ノワールの説明部分がこちら。
And finally, an even less typically Australian Australian wine, a fine, savoury Pinot Noir from the fashionably cool, damp region of Gippsland on the Victorian coast for under £20 a bottle. Franco D’Anna makes this Wickhams Road wine at his Hoddles Creek winery in the Yarra Valley, where his fellow winemakers are exasperated by his user-friendly prices.
最後に、いかにもなオーストラリアワインではないが、ヴィクトリア州の海沿いに位置し、冷涼湿潤で評価の高い産地「ギップスランド」で造られる、風味豊かなピノ・ノワールを20ポンド以下で紹介する。
フランコ ダナ氏がヤラ ヴァレーのホドルズ クリーク ワイナリーでこのウィッカムズ ロードを造っているが、仲間のワインメーカーたちはその「ユーザーフレンドリー」な価格に憤慨している。
この記事が影響しているのか定かではないですが、ワイナリー直売はもちろん、オーストラリアのオンラインワインショップではsold out続出でした。
私が行ったワインショップにも、ジャンシス ロビンソン推薦の2019年産はなく2018年産だった上に、定価よりも高い価格設定。
希少性ゆえに価格を上げたという憶測にすぎないけれど、26ドル(約2000円!!)でもこの味わいなら反論ありません。
こんなに美味しい2000円ピノ・ノワールに、周りのワインメーカーが太刀打ちできずに怒るのも分かる気がします。
ちなみに、オーストラリアのワイン関連ウェブサイトでは「ロックダウン赤ワイン」としてこのワインが取り上げられている等の情報は特に見つけられませんでした。
ワイナリーのウェブサイトも物凄くシンプル。
評価やアワード、ポイントについての記載はなく、自分たちの指針について淡々と書かれているだけ。
- 人為的な技術を極力加えることなく栽培、醸造する
- バランス、複雑さ、凝縮感、熟成性を重視し、完璧に栽培された古樹からテロワールを重視したヤラ ヴァレー最高品質のワインを生産することが使命
潔くてかっこいい!
[ワイナリー公式HP] Hoddles Creek Estate || Wines of the Yarra Valley
[日本正規インポーターHP] kpオーチャード|オーストラリアから厳選したおすすめワインの販売卸会社
ピノ・ノワールの銘醸地ギップスランド
もう一つ分かったことが、ギップスランドは南半球ピノ・ノワールの銘醸地であるということ。
オーストラリアのピノ・ノワールと言えばタスマニアでしょう、とざっくり思っていましたが、このギップスランドにはカルト的人気を誇るワインメーカーがいました。
南半球最高峰ピノ・ノワールの生産者バス フィリップです。
しかも、2020年からあのフーリエさんがチーフワインメーカーに就任したそうですよ!!
[日本正規インポーターHP] ワインと食の安心を南半球からお届けする - オーストラリア、ニュージーランド、ワイン、タスマニアマスタード、ヴァイアンドカンパニー
このようなスター生産者がいるからギップスランドが銘醸地として有名になったと言えなくもないと思います。
でも、何も知らずに飲んだウィッカムズ ロードの一口目の衝撃と幸せ感は忘れられません。
さらなる高みである、バス フィリップのピノ・ノワール95ドル。(トップキュヴェは80,000円。)
飲みたい。
高級ワインを飲みたいとガツガツしていた時期を経て、ワインは値段じゃないと悟った物分かりの良い私はどこにいったのでしょうか。
私、来月誕生日なんだよな~
( ↑ このWine Gippslandの中にウィッカムズ ロードを生産するホドルスクリークが入っていないのです。勝手な想像ですが、一匹狼的なのかな。)
おわりに
近頃、飲めば飲むほどワインが分からなくなる現象に陥っています。
ギップスランドのワインを飲んだのも初めてですし、オーストラリアワインのテロワールなんて語れる知識も経験もありません。
それに日頃から、生産者やブドウ品種、キャッチ―な見た目で選ぶことが多く、それがオーストラリアワインの楽しさかなと思っていました。
しかし今回ウィッカムズ ロードのワインに出会い、私はギップスランドを二度と忘れないし、「ギップスランドのピノ・ノワールがまた飲みたい!」と声を大にして言います。
◆販売場所情報
オーストラリアになくなっちゃった2019年も日本にはまだ在庫があるみたいです。
現地価格19ドル(1450円)は価格破壊、日本でも2000円代、毎年買います。
憧れワインにリストアップしたバス フィリップ。
[参考ウェブサイト]
ウィッカムズ・ロード ギップスランド ピノ・ノワール 2019|ワイン,オーストラリア|ワイン・食品・雑貨通販のWINE MARKET PARTY
バス・フィリップ・ワインズ Bass Phillip Wines|ワイングロッサリー